モチベーションに振り回されないために/仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか
何かを始めるときにモチベーションに影響されてしまう、モチベーションの高低で仕事の出来にムラがある。
そんな悩みに効く本を紹介します。
仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか (幻冬舎新書)
- 作者: 相原孝夫
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2013/03/29
- メディア: 新書
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【目次】
モチベーションありきではない
物事に取りかかろうとしたときに、なんとなく気持ちが入らず、いつまでも始められずにダラダラ時間だけが過ぎてしまうということが僕はよくある。
「グズを抜け出すために」といったテーマの本を買ったものの、結局、それすら開かずに放置するありさまだ。
なんとなくモチベーションがあがらないのだ。その気になったらすぐできる、だからその気になるまで置いておこう。
典型的なグズの思考だ。夏休みの宿題は最後に追い立てられるようにやったタイプだし、取り込んだ洗濯物もなかなか片付けないので部屋の隅に積みあがって山になっている。
さて、とある日に書店で本書のタイトルが目に留まった。
「仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか」
モチベーションを「上げる」のではなく、「こだわらない」。
モチベーションをテーマにした本にしては珍しい言い回しが気になり、読んでみることにした。
”プロセスを進めていくうちに、モチベーションが上がっていくわけであって、(略)モチベーションありきではないのだ。感情を排除するわけではない。感情はプロセスを進めていくうちに、楽しいとか苦しいとか、湧き上がってくるものだ。 p.134”
”仕事もそうだが、やりたくてやるというケースは多くなくて当然だ。(略)進めていく中で気分が乗ってくることもあれば、そうでないこともある。やる前から、モチベーションを持ち出す必要はないのである。 p.135”
たしかに大抵の物事は、始めてしまえば案外すんなり進むものだ。
宿題しかり、洗濯物しかり。ようは取り掛かるまでが一番面倒くさい気持ちになるのであり、どうにかしてそこさえ超えてしまえばいいのだ。
本書では、物事の原動力にモチベーションを持ち出す必要はないといっている。
取り組むべきことはやるのが当たり前だからやる。そしてモチベーションは、取り組んでいる最中の感情の起伏でしかないというのである。
モチベーションの有無を行動の理由付けとしていた僕としては、なかなかハッとさせられる考え方である。
内面がどうであれ、やろうと思えば体は動く。気分が乗るかは行動についてくるオマケ的なものである。
この思考は、気分が乗らないから始められないというグズ思考を追い払う強力な武器になると感じた。
モチベーションに振り回されないための「習慣化」
ではどうすればモチベーションに振り回されず、安定した取り組みができるのか。
本書では、その答えは「習慣化」であると述べている。
”モチベーションが問題にならないケースは三通りある。一つは、好きなことをやっているときであり、もう一つは、それをすることが当たり前になっていること、つまり習慣化していることをやっているとき、そして三つ目が、切迫した余裕のない状況にあるときだ。 p.139”
”積極的に取り組むべき観点は、二つ目の「習慣化」ということになる。仕事の中で積極的に興味の向かない大多数のこと、その中にはできれば避けたいストレスフルなことも多いであろう。これらのことは、できるだけ「習慣化」、「ルーティーン化」を図るべきである。 p.140”
「習慣化」とは、経験に基づいて仕事を細かく分解し、どの段階で何をすればいいのかをパターン化することのようだ。仕事の「型」という表現もしている。
その時々で何をすればいいのかが明確にして、それを粛々と実行するだけという状態にまで落とし込むのだという。やることがはっきりとしている以上、そこに感情の起伏が入り込む余地はなく、常に安定したパフォーマンスを発揮できるのだそうだ。
著者がインタビューを行ったとある人物は、「仕事なんてやりたくないことが多いのだからやる気がなくて当然。でも、その中でも気持ちが盛り上がるときがあり、そういう状況を楽しめる」というようなことを述べたという。
ルーティーンをこなすことでパフォーマンスを維持し、気持ちが乗れば儲けものといったところだろうか。
やりたくないことが多い仕事にやりがいや幸せがあるかの考察は別の機会に預けるとするが、この人物の意見にも感じ入るところはある。
つまり、モチベーションの低い状態が普通であるというくらいに構えていれば、多少やる気が出なくてもコンディションは問題にならないのだ。
そして、それを可能足らしめるのが「習慣化」という技術なのである。
さて、「習慣化」のために仕事を細かく分解するとはいうが、なかなか通り一辺倒にできるものではないだろう。
そこで筆者が勧めているのが、自分の仕事を「他者に指示して実行させる」と考える方法だ。
何をどうするか、注意点は、より高い効果を出すにはどうすべきか。自分が行動するときより深く詳しく細かく言葉にしてまとめることができるだろう。
その言葉がつまり分解された仕事であり、「型」である。
ここまでくれば、あとは「習慣化」できるまで型を繰り返し体に覚えこませるだけだ。淡々と実行するだけの型にはモチベーションの高低は入り込まない。
「習慣化」は、安定したパフォーマンスを発揮するための、モチベーションに頼らない技術なのである。
仕事にも当てはまる「パレートの法則」
安定したパフォーマンスを発揮するためには「習慣化」が重要だと述べられているが、それは機械のようにただ淡々とルーティーンを回せばいいということなのだろうか。
著者によれば、答えはノーである。
”ハイパフォーマーと言われる人たちの特徴の一つは、(略)他の多くの人たちと仕事上の時間配分が異なるケースが多い。「パレートの法則」に照らして言うのであれば、最重要の20は完璧に抑え、あとの80は時間の許す範囲で対応する。 p.64”
「パレートの法則」は80:20の法則とも呼ばれ、全体の数値の大部分は一部の要素が生み出しているという説だ。
筆者はこの法則が仕事にも当てはめられ、できるビジネスマン(ハイパフォーマー)は全体の仕事のうちで重要な20に力を集中させていると分析している。
「習慣化」とは仕事を細かく分解し、タスクをもれなく把握することとも同義である。
すなわち、仕事の勘所を正確に把握できるのだ。
業務範囲が広くなり抱える仕事が多くなるほど、完璧に1から100までを一人でカバーするのは難しい。まして、すべてのタスクを全力でこなすのは現実的ではない。
ハイパフォーマーは、その仕事の要点は完璧におさえ、他は余力で遂行するというリソースの振り分けができているのだと筆者は述べる。
すべて完璧にこなそうとする人はどこかで無理が出て、落としてはいけない要点を取りこぼしたりもしてしまう。
つまり、「習慣化」されたタスクの実行は、効率的なペース配分によって効果が最大化されるのである。
本書はモチベーションにこだわるべきではないとの点から「習慣化」を述べているもので、詳細な仕事術の指南書ではない。仕事の要点をおさえる方法については、それをテーマに扱ったビジネス書を読んだときにまとめてみたいと思う。
より高いレベルの仕事術を身に付ける下地として、モチベーションに左右されない「習慣化」と、ハイパフォーマーに学ぶリソースの振り分けは大いに参考になるものである。
【まとめ】
「モチベーション」は物事に取り組む際の原動力として取り上げらるが、個人的要因に影響されやすいものである。やるべきことは必要があるから取り組むのであって、感情の起伏はその過程でついてくる。したがって、やる前からモチベーションを持ち出す必要はない。
とりあえず実行してしまおう。
仕事は「習慣化」すれば、モチベーションに左右されず、安定したパフォーマンスを発揮できる。また、適切にリソースを振り分けることで、効率よく処理することができる。
モチベーションが上がらないから動けないという悩みは多い。
まずはモチベーションありきという考え方を捨て、行動から始めてみよう。
本書がその助けとなる。
【追記】
本書では、職場における「機嫌」の大切さについても触れている。
モチベーションにかかわる一つの事例として取り上げられているので本筋ではないのだが、これもとても重要なテーマだと感じている。
僕が今まで読んだいくつか本でも取り上げられているので、別の機会にまとめたいと思う。
仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか (幻冬舎新書)
- 作者: 相原孝夫
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2013/03/29
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